ストーリー

ザ・デザイン

ザ・デザイン

この3つの言葉が、ウズベキスタン・パビリオンのデザインの本質を表しています。設計を手がけたのは、ドイツ・シュトゥットガルトと韓国・ソウルに拠点を置く国際的なスタジオでありミュージアムプランナーであるATELIER BRÜCKNER。庭のライフサイクルから着想を得たこのパビリオンは、ドイツ・デザインアワードを受賞したデザインであり、ウズベキスタンの豊かな文化遺産と現代的な美意識、時を超えるクラフトマンシップ、自然素材との調和を体現しています。建築設計とプロジェクトマネージャーを務めたヤニス・レナー氏が、その構想について語ります。

アイデアの“種”は何ですか?
シルクロードに点在していた隊商宿(キャラバンサライ)です。人々が知識や物語、物資を交換した古の休息地であり、知のハブ。
それは「保護・学び・交流」を象徴する場所であり、伝統が未来と出会う場所。ウズベキスタンのクラフトマンシップが、日本の職人技と響き合う場所でもあります。さらに、ウズベキスタンの風景を抽象的に建築に翻訳するという考え方でもあり、「知の庭園(Garden of Knowledge)」を、静けさと交流の場として設計しました。

特徴的な要素は何ですか?
「知の庭園」は、伝統に根ざし、革新の花を咲かせる空間です。
パビリオンは、持続可能な現代建築と、ウズベキスタンの変容の物語を語る展示が融合した構成です。
教育、文化、イノベーション、クリーンエネルギーなど、「Strategy 2030」に沿った多様な取り組みが紹介され、ウズベキスタンの変革を象徴する場となっています。建築はレンガ、木、土といった伝統的な建材を用い、過去の技術を土台としながらも、それを未来へつなぐ構造としてデザインされています。

体験の流れはどのように構成されていますか?
このパビリオンは、まるで生きた庭のように構成されています。
地上階は豊かな「土」、屋上は「庭」、そして成長と変容を象徴する「上昇するプラットフォーム」が中核となります。
来場者はまず「大地」へと足を踏み入れ、そこにはウズベキスタン文化の根があり、素材としては粘土やレンガが使われています。
そして最後には「庭」を通って建物を後にします。そこでは、ウズベキスタンの風景を日本の木工技術と融合させて表現しています。

デザインのインスピレーションは何ですか?
ヒヴァのジュマ・モスク――アジアでも類を見ない、彫刻的な柱と屋根構造で知られる建築です。
また、ブハラの要塞は、粘土やレンガといった伝統的な壁づくりの技術を今に伝えています。
伝統的な木彫、国土の地形はテラス床面のデザインにも反映されています。
これらの要素は、ウズベキスタンの建築と文化遺産の土台を形成しており、同時にウズベキスタンと日本の文化をつなぐ架け橋でもあります。
たとえば、木彫技術や寺院建築といった共通点を通じて、両国の間に芸術的・建築的な対話が生まれることを願っています。

使用された素材は?
木材は、大阪近郊の9つの森林から地元調達されたものを使用しています。
土は、淡路島から採取された粘土を用いました。
また、日本で解体された建物のレンガも採用しており、持続可能性と、ウズベキスタンの文化とつながる素材として選ばれました。
砂利も用いられており、これは日本の庭園にも共通する素材でありながら、ウズベキスタンの風景を抽象的に表現する意図も込められています。

実現にあたって最大の課題は何でしたか?
彫刻的な構造と安定性、そして気候性能のバランスをとることでした。
たとえば、パーゴラ(木製の屋根構造)は構造的にも彫刻的にも複雑で、日本の耐震基準を満たすことは大きな挑戦でした。
また、動くプラットフォームをストーリー性のある空間にどう組み込むかという点も課題でした。
このような形状・仕組みの構造は、日本国内では前例がなく、初の試みとなります。

お気に入りのディテールは?
ジュマ・モスクに着想を得た木製のパーゴラです。彫刻的な建築介入として設けられたもので、屋外に立ち上がる柱の森が、没入型の建築体験をつくり出しています。静かで、どこか神聖さすら感じさせる空間が、思索や文化的な対話の場となるよう意図しています。

このパビリオンが、訪れる人々にどんな感情を残してくれることを願っていますか?
深く張った「根」から、花ひらく「未来」へと向かう旅――この体験を通して、好奇心やつながり、内省が呼び起こされることを願っています。
訪れた方々が、豊かさやインスピレーションを得て、ウズベキスタンの進化し続ける物語により深く共感を持って帰っていただけたらうれしいです。